宇宿真紀子は、フライブルグ高等音楽院(ドイツ)を経て、パリ高等音楽院、ルエイユ・マルメゾン音楽院(院相当課程)を卒業。
ニコライ・ルービンシュタイン国際ピアノコンクール第3位となって世界的評価を得るとともに、仏国内外のコンクールで入賞歴を重ね、活躍の場を広げています。
実弟宇宿直彰とのデュオ(ピアノ&チェロ)「レ・クロッシュ」でも活躍中ですが、そうした彼女の初のソロ・ピアノ・アルバムが完成しました。
年記念イヤーを機に、ここには、いま宇宿真紀子が最も心を寄せているというシューマンのピアノ曲が3曲収められています。
潤沢な音楽性と確かな技巧をもつ彼女のシューマンは、明るい響きを基調としながら豊かな詩心と情感とをもって伸び伸びと歌うところが実に魅力的です。
作曲家と作品への共感を、率直に、誠実に伝えるその表出力も素晴らしく、たとえば『子供の情景』は、無邪気さと遊び心に満ちており、『アベッグ変奏曲』は、いま生まれたかのような新鮮な息づかいにあふれ、『謝肉祭』は、色彩に富み、輝かしく躍動的で、しかもチャーミング。
ここに収められたイマジネーション豊かな演奏は、まさにシューマンの宝石箱を覗くような印象を受けます。
新世代のピアニストのひとり、宇宿真紀子への期待、大なるものがあります。
今後の活躍が楽しみです。
横堀朱美 (音楽評論)